2021年 09月 14日
天を目指す街
ここ10数年で東京の街は益々様変わりしました。
次から次へと建築されていく超高層ビル群。
オリンピック・パラリンピックが終わってなお、
相も変わらず、あちこちで大規模な工事現場を見かける。
街の中から雑多で混沌としたものが次々と取り除かれ、
直線的なラインが視覚を貫く。
新旧が交わる直線のライン。
右側の建物は旧東京郵便局舎だった建物。
現在はKITTE丸の内として商業施設になっている。
直線は、まっすぐ伸びて一見気持ちが良い。
しかし、
自然界は本来、ゆらぎ、波長に満ちているはず。
人間の性格でもそうだが
あまりにも一本気だと、
あるときどこかでぽきんと折れそうな気がする。
どこまでも天を指向する建築群を見ているとかつて訪れた古い街を想い出す。
それは、イタリア中部トスカーナ州にある、
サン・ジミニャーノという古い小さな街。
ユネスコの世界遺産にも登録されているこの街には、
いまなお古い塔が数多く遺っているが、
かつては今よりはるかに多い数の塔が乱立していたという。
これらの塔は、かつての人々の権力争いの遺構。
富と権力をめぐり、人々は塔の高さを競い合っていたという。
街の広さに対して塔の数が多すぎて、
一種異様にも思えるその光景が、かえって人間の強欲さを暗に示し、
今なお私の心に深く刻まれている。
現代の摩天楼で、
ツインタワーが崩壊してから、今年で20年。
それ以前とそれ以降で、
世界は大きく変わってしまった。
正しいとか正しくないを問いたいのではない。
天を指向する建築群を眺め、
時代は変われど、
それでも変わらない人間性を想い、
何事かを噛みしめるように歩く初秋のある日でした。
by mahoroba-diary
| 2021-09-14 08:54
| 建築