人気ブログランキング | 話題のタグを見る

まほろば日記 四季折々、五感を通して感じること、想い出や呟きも含めた日々の徒然日記です

秋の夜長に響く、楽聖の調べ







今年8月を過ぎた頃からだろうか。

無性にベートーヴェンのピアノ・ソナタが聴きたい、と思うようになった。


それも、
是非ともマウリツィオ・ポリーニの演奏で・・・。




秋の夜長に響く、楽聖の調べ_b0362781_08565684.jpg



久しぶりに棚から取り出し、この2か月余りの間、繰り返し聴いているのが、
ポリーニ奏でる、
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集である。



1975年、当時、新進気鋭のポリーニが、
ベートーベン最晩年のピアノ・ソナタ第30番・第31番でスタートし、
39年の歳月をかけて、
全集の録音が完結したのは2014年。




秋の夜長に響く、楽聖の調べ_b0362781_08564420.jpg



交響曲にしろ、弦楽四重奏曲にしろ、
ベートーヴェンの音楽には一切駄作と呼べるものがないと言われているが、
初期の作品から聞き進めていくと、
最初期の頃のピアノ・ソナタには、
モーツアルト・ハイドンから連なる古典派としての音楽的伝統の中で、
もがき、抗い、格闘しているように感じる部分もあるような気がする。


それが、第8番『悲愴』のあたりから、
蛹が脱皮するかのように何かが変容し始め、
第12番からは、超然と、ベートヴェン独自の音楽的世界が確立されていく。


それ以降は、第13番、第14番『月光』、第15番『田園』、
第17番『テンペスト』と一般にも知られる名作が続き、
第21番『ワルトシュタイン』、第23番『熱情』あたりになると、
天才大作曲家ベートーヴェンの比類なき世界に、
改めて言葉にならぬほどの感動が胸を満たす。


そして、最晩年のピアノ・ソナタ群へ・・・。





秋の夜長に響く、楽聖の調べ_b0362781_08570203.jpg

(若かりし頃のポリーニ)




フランス革命という大変革期を跨いで、
それまではパトロンの庇護の元で仕事をしていた音楽家たちも、
自立を求められるようになっていく。


そして啓蒙主義が席巻する当時の社会の中で、
ベートーベンが追及し続けた理念と理想。


当時、音楽の都ウィーンで大成功を収めはしたが、
その人生の中で、考えられうる限りのあらゆる身体的・精神的苦難と苦労を重ね、
一時は遺書さえしたためてなお、
作品の中には一切の自己憐憫的な音の響きを残さず、
与えられた運命を受けとめ、
情熱と至福と進取の気概と、
壮大な人類愛への理想をもって生き抜いた『意思』の人。


ベートーヴェンの交響曲も素晴らしいけれど、
ピアノ・ソナタには、より個人的で、
聴く者に、人間として同じ道を歩んでいるという実感を与える何かがあるように思う。
その感覚が、
期せずして、このコロナ禍の中で、
言葉にならぬ共感と叱咤激励を受けるようで、込み上げてくるものがある。





秋の夜長に響く、楽聖の調べ_b0362781_08570908.jpg

(年を重ねたポリーニ)




ケンプもブレンデルのベートーヴェンも好きだけれど、
ポリーニが奏でるベートーヴェンは今、個人的にとても肌が合う。


ポリーニのもつ、天才的な技巧や技術の根底に流れる、
穏やかな明るさと、そこはかと感じられるヒューマニティーのようなもの。
それらがベートーヴェンのピアノ・ソナタに融合して、
心の奥底にあたたかい光と希望を呼び込んでくれる。





秋の夜長に響く、楽聖の調べ_b0362781_08565042.jpg


奇しくも、
今年はベートーヴェン生誕250年でもある。


Ludwig van Beethoven
(1770~1827)



今年は殊の外、胸の奥底に響いてきます。






by mahoroba-diary | 2020-10-17 10:15 | 音楽