2019年 05月 09日
場所は、東京国立近代美術館工芸館
(旧近衛師団司令部庁舎)
建物は重要文化財に指定されています。
こちらの工芸館は今年、金沢に移転されることが決まっています。
現・建物の移築はなく、
金沢の旧第9師団司令部庁舎と旧金沢偕行社を移築・活用して
国立工芸館として兼六園の近くに今年完成予定だそうです。
(オープンは2020年オリンピック開催前を予定しているそうです。)
桃山時代から現代の陶工による作品まで、
備前焼のみの展覧会。
備前焼は釉薬を一切使わず、ただ赤松を焼成燃料として
土と炎のみで焼き上げる『自然』の美。
登り窯や穴窯などの薪窯で、
1千年以上昔と変わらぬ方法で、
10日から14日くらいの日数をかけて
昼夜、火を絶やさずに焚き続けるという。
まさに『自然』が焼き上げる豪快で素朴で力強い焼物。
土もまた備前で取れる粘土層を使うのが伝統だそうだが、
最近では土の枯渇も懸念されているらしい。
今回拝観した現代の陶工の作品のうち、
人間国宝の伊勢崎淳氏の作品に
我が夫はいたく魅せられたらしい。
随分長いこと魅入っていた。
珍しく、欲しい、なんて言い出している。
私はやっぱり桃山時代の古備前に魅せられる。
大切に使い込まれ、保管され続けたものにしかない
圧倒的な存在感。
作為の様が、あの時代にしかなしえなかったような造形美で、
なんとも言えずカッコいいのだ。
日本人の精神の古層を眺める思いがする。
逞しい美に溢れた作品群を前にしていると、
脳裏にふと
漆黒の中に炎とともに浮かび上がる
不動明王を見るような思いがした。
厳しさの奥に、無限に広がる慈愛と優しさを感じるからなのか・・・
炎によって出来上がる力強く荒々しい肌に
なぜだか惹かれる自分がいる。
飾り気がない分、
本質が浮かび上がり、
小賢しさや下手な計算などは
まったく通用しない世界だと思う。
備前の緋襷の大皿に
豪快な料理を盛り付けて
ドンと出てくるような食卓にも実は憧れている。
自作の野菜、野山で摘んだ野草、自分で釣った川魚などを
炭で調理し、備前などの豪快な土ものの器に盛りつけられた
男料理などを供されたら、
私など思わず惚れてしまうかもしれない。
by mahoroba-diary
| 2019-05-09 00:00
| アート・美術館・ギャラリー